文献紹介 [読みの分析]

2012年3月 7日 (水)

[Adler 1998] A diary study of work-related reading: Design implications for digital reading devices

【文献紹介】
Adler, A., Gujar, A., Harrison, B., O'Hara, K., Sellen, A.J.: A diary study of work-related reading: Design implications for digital reading devices. In Proc. of CHI '98, pp.241-248, (1998).

http://portal.acm.org/citation.cfm?id=274679&coll=portal&dl=ACM
http://www.hpl.hp.com/personal/Kenton_Ohara/papers/reading_CHI.pdf

【概要】

15人の被験者の連続した5日間、業務に関連する読みについてダイアリー分析を実施。
 航空機のパイロット (1人)
 外科医 (1人)
 臓器移植病棟の責任者兼看護婦 (1人)
 住居の建築家 (1人)
 不動産仲介人 (1人)
 弁護士 (上級者と若手1人ずつ)
 麻酔担当医 (2人)
 更生施設の看守 (1人)
 会計アシスタント (1人)
 眼鏡商 (1人)
 マーケティング・マネージャー (1人)
 小さなベンチャー企業の役員 (1人)
 ソーシャルワーカー (1人)

分析から得られた知見は以下のとおり。


  • 読むことの偏在性。平均して、15人の被調査者によって行われた活動の82パーセントがドキュメントを伴うものであった。このドキュメントに関連する活動の70パーセントにおいて、何らかの読む活動が見られた。
  • 紙の嗜好性。紙を用いた読み書きは、ドキュメントに関連する活動のトータル時間の85パーセントを占めることがわかった。オンラインでの読み書きは、トータル時間の13パーセントにしか満たなかった。
  • 読みの多様性。読む活動は、様々な形態をとる。いろいろな目的でなされ、多様な活動と関係し合っている。
  • 読みの目的の多様性
  • 書くことと連動。読む時間の75パーセント以上 (最高で91パーセント) はある種の書く活動と一緒になされた。
  • 複数のドキュメントの利用。人が行なう読む活動の多くは、単一の紙や単一のコンピュータに限定されて行われるわけではない。むしろ、読むことは複数の紙を行き来しながら、また紙とコンピュータを行き来しながらなされた。これをもっと詳細に見ると、読むことに関する様々な活動に費やした時間のうち、単一の表示画面 (単一の紙または単一のコンピュータスクリーン) だけに依存した時間は、読みに費やされた時間の約半分であった。残り半分の時間は、読み手は少なくとも2つ (時には3つ以上) の表示画面を同時に利用していた。

読みを10種類に分類し、ダイアリーで収集した読みの事例を分類している。結果は以下のとおり。


  1. (28%) 相互参照の読み
  2. (25%) 質問の答えを探すための読み
  3. (21%) 議論のための読み
  4. (14%) 拾い読み
  5. (9%) 校正・編集のための読み
  6. (5%) 自己啓発のための読み
  7. (3%) 思い出すための読み (TODOリスト、買い物リスト、ポストイット)
  8. (2%) 確認のための読み (文書内容や作業文脈を確認するための読み)
  9. (2%) 学習のための読み
  10. (1%) 聞くことを助けるための読み

2012年3月 6日 (火)

[Sellen 2001] The myth of the paperless office

【文献紹介】
Sellen, A.J. and Harper, R.H.: The myth of the paperless office, The MIT Press, 2001. (柴田 博仁, 大村 賢悟 訳: ペーパーレスオフィスの神話-なぜオフィスは紙であふれているのか?-, 創成社, 2007)
[Amazon]

ペーパーレスオフィスはなぜ実現しないのか。オフィスはなぜ紙であふれているのか。こういった疑問を解明するため、Rank Xeroxの研究者 (ケンブリッジにあるEuroPARC) は長年にわたって紙の利用実態を調査してきた。本書は、これら研究成果をまとめたもの。

調査方法はさまざまであり、エスノグラフィー、心理学実験、業務コンサルの体験談など。

調査結果としては、以下のものがある。
○ IMFでの紙文書、電子文書の利用実態調査
○ 警察官や航空管制での紙から電子への移行の試み
○ 業務での読みの観察 (日誌法)
○ 紙での読みと電子ツールを用いた読みの比較実験

全体として、紙の良さを強調する論調になっているが、電子文書や電子ツールの利用を排除しているわけではない。最終的には、紙と電子のよりよい使い分け、また両者を融合する技術について言及している。

2012年3月 4日 (日)

[Sellen 1997] Paper as an analytic resource for the design of new technologies

【文献紹介】
Sellen, A. and Harper, R.: Paper as an analytic resource for the design of new technologies, In Proc. CHI '97, pp.319-326, (1997).

http://portal.acm.org/citation.cfm?id=258780
http://citeseer.ist.psu.edu/sellen97paper.html

IMFを対象にオフィスで紙がどのように使われているのかをフィールド調査する。毎日、どんな活動を行ったか、その活動でどのような文書を利用したか、その文書は紙を用いて行ったか、電子的に行ったかを調査。

結果として以下のことが明らかになる。
○ 業務は文書 (特に紙文書ト) に頼って行われている。
活動の97%は、文書に関連する活動。ドキュメントに関与したこれら活動のうち、86%は紙に関与し、51%は紙文書トだけに関与する。また、35%は紙と電子の両方に関与し、電子文書だけに関与するのは14%である。
○ 文書の編集は、ほとんど協調作業としてなされ、その多くは紙を用いてなされる。
○ 他人の文書の校正では紙が好まれる。
○ コラボレーションの半分近く (44%) は対面でなされる。そして、コラボレーションでの校正は紙に頼っている (82%)。
○ 文書の配布では紙が好まれる。

少し古い調査研究ではあるが、現実の組織で紙がどのように使われているのかを調査した有名な論文。

2012年3月 3日 (土)

[O'Hara 2002] Understanding the materiality of writing from multiple sources

【文献紹介】
O'Hara, K.P., Taylor, A., Newman, W., and Sellen, A.J.: Understanding the materiality of writing from multiple sources, International Journal of Human-Computer Studies, Vol.56, No.4, pp.269-305, (2002).

http://www.hpl.hp.com/personal/Kenton_Ohara/papers/writingmateriality_IJHCS.pdf

著作タスクを分析している。ただし、著作をその他多くのドキュメントを参照しながら書くタスクとしてとらえている。10人の被験者に対してインタビューという形で分析し、著作の最中に紙ドキュメントがどのようにして使われるのかを分析。以下の点を見出している。
○ 注意の移動の頻繁に生じる。
○ 空間配置が有向に活用される。
○ ソース素材への注釈、マークアップが頻繁に行われる。
○ 同じドキュメントの紙と電子版の併用されている。

この知見に基づき、今後の著作支援の可能性を探っている。基本的には eBook とワープロの連携と考えているようだ。

2012年3月 1日 (木)

[O'Hara 1999] Supporting memory for spatial location while reading from small displays

【文献紹介】
O'Hara, K., Sellen, A.J., and Bentley, R.: Supporting memory for spatial location while reading from small displays. In Proc. CHI '99, pp.220-221, (1999).

http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.153.3273&rep=rep1&type=pdf
http://portal.acm.org/citation.cfm?id=632853&dl=acm&coll=&CFID=15151515&CFTOKEN=6184618

読んでいる最中に付随的に生じる位置記憶に関する実験の報告。

被験者はXRCEの同僚20人。実験は被験者間デザイン。デバイスは 3x5 インチのポータブル表示デバイス。10人が focus+context (実際見たとこ ろでは、overview+detail の UI になっているが) で、残り10人が通常のエディタで読み。
2カラムで5ページの文章を読んだ。概要を理解することを教示 (その後で行うテストについては何も言わなかった)。読んだ後、27個の単語を提示して、文章のどの位置 (left, right, top, middle, bottom) にあった かを答える。

結果として、focus+context は位置記憶を支援。スクロールインタフェースは位置記憶を支援しない。これをふまえて、focus+context は "sense of text" を取得するのに適しているとしている。

2012年2月29日 (水)

[O'Hara 1997] A comparison of reading paper and on-line documents

【文献紹介】
O'Hara, K. and Sellen, A.J.: A comparison of reading paper and on-line documents. In Proc. CHI '97, pp.335-342, (1997).

http://portal.acm.org/citation.cfm?id=258787&coll=portal&dl=ACM
http://citeseer.ist.psu.edu/hara97comparison.html
http://acm.org/sigchi/chi97/proceedings/paper/koh.htm

紙ドキュメントと電子ドキュメントの利用性について比較実験を行っている。読むために何が必要かということについて、次のようにまとめている。
○ 柔軟なナビゲーションの必要性
○ 空間に情報を広げることの必要性
○ 読みながら注釈付けすることを必要性
○ 行為を統合することの必要性

[O'Hara 1996] Towards a typology of reading goals

【文献紹介】
O'Hara, K.: Towards a typology of reading goals, Rank Xerox Research Centre, Technical Report, EPC-1996-107, (1996).

http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/summary?doi=10.1.1.1.8595

読みの類型化を行っている。

テキストの読み方
* Receptive reading (受容的な読み)
連続的にテキストの内容を「受ける」ような「聞く」に近い読み。
* Reflective reading
考えながらの読み。
* Skim reading
概略をつかむための読み。
* Scanning
特定の情報を探す読み。

その他の区別
* Serial/Non-serial reading
連続読み (前から読んでいくような読み) と不連続読み (そうでない読み)
* Single/Repeated reading
1回きりの読みと繰り返しの読み

読みを支援する活動
* Underlining
* Note-takig
* Outlining
* Networking

読みの目的
* Reading to learn (Robinson 1970, Lorch 1993)
* Reading to self inform (Lorch 1993)
* Reading to search/anser questions (Mynatt 1992, Askwall 1989)
- forward search
- zig-zagging (jumping back and forth between sentences)
- selective search
- dog-ear marking
* Reading for research (Dillon 1992, Richardson 1989)
* Reading to summarise (Kintsch 1978, Brown 1983, Winogard 1984)
* Reading for discussion (Lorch 1993)
* Proof-reading (Gould 1984, Wilkinson 1987, Creed 1987, Wright 1984)
* Reading while writing from muliple sources
* Reading to write and revise documents (Hayes 1987, McGinley 1992, Bartlett 1981, Stallard 1974, Sommers 1980)
* Reading for critical review (Wright 1984)
* Reading to apply (Coulson 1982, Lorch 1993, Sticht 1985)
* Reading for problem solving and decision making (Greatbatch 1992)
* Reading for enjoyment (Lorch 1993)

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