6 研究 / Research

これまでの主な研究

 


紙と電子メディアでの読みの比較実験 [2007~2014年]

電子メディアの表示品質は十分に高いものであり、ページめくりや文書移動などの文書操作を伴わない限り、紙での読みと電子メディアでの読みのパフォーマンスには違いはありません (主観的には紙は強く好まれていますが)。

しかし、文書操作については概して紙のほうが操作しやすく、文書操作が頻繁に発生する読みにおいて、電子メディアでの読みに対する紙での読みの優位性が顕著に示される傾向があります。これまで、複数文書の相互参照 [1]、ページ間を頻繁に行き来する読み [2]、マニュアルから答えを探したり、写真集から写真を探す読み [3]、校正読み [4]において、コンピュータディスプレイやタブレットに対する紙の優位性を確認しています。また、文書の傾きが読み書きに与える影響も調べ、文書の角度を自由に調整できることの重要性も確認しています [5]。

これまでの研究の総括的な報告としては、書籍『ペーパーレス時代の紙の価値を知る』(産業能率大学出版部) [6] を薦めます。

【主要文献】

[1] 柴田 博仁, 大村 賢悟: 文書の移動・配置における紙の効果: 複数文書を用いた相互参照の読みにおける紙と電子メディアの比較. ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.12, No.3, pp.301-311, (2010).
[2] 柴田 博仁, 大村 賢悟: ページ間の行き来を伴う読みにおける紙と電子メディアの比較, ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.13, No.4, pp.345-356, (2011).
[3] 柴田 博仁, 大村 賢悟: 答えを探す読みにおける紙の書籍と電子書籍の比較. 日本画像学会論文誌, Vol.55, No.3, pp.274-282, (2016).
[4] 柴田 博仁, 高野 健太郎, 田野 俊一: テキストタッチが読みに与える影響: タブレット端末の利用がアクティブリーディングにもたらす影響の分析. 情報処理学会論文誌, Vol.57, No.9, pp.2131-2141, (2016).
[5] Shibata, H., Omura, K., and Qvarfordt, P.: Optimal orientation of text documents for reading and writing. Human-Computer Interaction, Taylor Francis, (Jan. 30, 2018).

 


手書きの認知負荷と感性評価 [2012~2014年]

2つの課題を同時に行わせる二重課題法を用いて、手書きとタイピングの認知負荷を比較しました [1]。手書きでメモまたはキーボードでタイピングしている最中に単語を覚えさせる課題を行ったところ、手書きのほうが記憶成績がよく、認知負荷が低いことが示唆されました。なお、タッチタイピングできる人でも同様の結果が見られたことから、タッチタイピングできるできないにかかわらず、タイピングの認知負荷は高いことが示唆されました。

感謝の気持ちを伝える手紙を題材に、メディア (紙か電子か) や文書スタイル (活字か手書きか) が読み手の印象に与える影響を調べました [2]。結果として、手紙の文面が同じでも、メディアや文書スタイルが変わると、読み手の文面の評価、送り手のパーソナリティの評価にまで影響を与えることがわかりました。特に、紙への手書きが、最も感謝の気持ちが強く伝わることがわかりました。

【主要文献】

[1] Shibata, H. and Omura, K.: Reconsideration of the effects of handwriting: Comparing cognitive load of handwriting and typing. ITE Transactions on Media Technology and Applications, Vol.6, No.4, pp.255-261, (2018).
[2] 柴田 博仁, 大村 賢悟: 手紙文の内容評価と差出人のパーソナリティ評価に及ぼす表示メディアと文書スタイルの効果. 日本印刷学会論文誌, Vol.54, No.1, pp.49-57 (2017).

 


オフィスとメディアの環境負荷の調査 [2009~2011年]

【主要文献】

[1] 柴田 博仁, 大村 賢悟: 表示メディアとしての紙と電子メディア: 環境の視点からの比較, 富士ゼロックス・テクニカルレポート, No.20, pp.85-95, (2011).
[2] 伊藤 裕二, 川本 真司, 柴田 博仁: オフィスでの働き方の変革による環境負荷削減効果の見積もりに関する考察, 人工知能学会誌, Vol.28, No.4, (2013).

 


マルチタスキング支援とウィンドウ環境 [2006~2009年]

知的財産管理業務を対象に、実業務でウィンドウ操作ログを取得して分析を行いました。結果として、17インチディスプレイを利用する状況で、人はPCに対して継続的に操作を行っている時間の8.5%をウィンドウ操作に費やしていることがわかりました [1]。さらに、17インチディスプレイから24インチの害画面ディスプレイ環境に変更してもウィンドウ操作に費やす時間 (ウィンドウ操作コスト) は減少しないものの、17インチディスプレイを2枚並べた多画面ディスプレイ環境ではウィンドウ操作コストの削減が見られました。

Figdockingbeforeafter
この結果をふまえ、PCでのマルチタスキング状況を支援する環境を開発しました [2], [3]。この環境では、ドッキングという操作を介して複数のウィンドウをつなぎ合わせ、ウィンドウをグループ化したワークスペースを構築できます。これにより、複数のウィンドウを同時に前面化、移動、サイズ変更することが可能になります。さらに、先のウィンドウ操作ログの分析の経験をふまえ、ワークスペース内のウィンドウが重なり合うことのないようウィンドウをタイル状に配置しました。

この研究については、2009年の人工知能学会全国大会にて大会優秀賞 (タイトルは『ウィンドウをドッキングすることによるマルチタスキング支援』)、2011年のインタラクション2011にてインタラクティブ発表賞 (タイトルは『ワークスペースの構築を可能とするマルチウィンドウシステムの提案』) の2つ賞を受賞しました。

【主要文献】

[1] 柴田 博仁: 大画面ディスプレイ・多画面ディスプレイの導入による業務効率化の測定. 情報処理学会論文誌, Vol.50, No.3, pp.1204-1213, (2009).
[2] 柴田 博仁, 大村 賢悟: ワークスペースの構築を可能にするウィンドウシステムの提案と評価. 人工知能学会論文誌, Vol.26, No.1, pp.237-247, (2011).
[3] Shibata, H. and Omura K.: Reducing the cost of window operations by docking windows, International Journal of Innovative Computing Information and Control, Vol.9, No.12, pp.4665-4679, (Dec. 2013).

 


文章作成支援 [2001~2003年]

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また、断片的なテキスト情報をまとめあげて文章を作成する環境を提案しました [1], [2]。特徴は木構造と二次元平面という性質の異なる表現-操作系を組み合わせることで、トップダウンとボトムアップの両方の文章作成をシームレスに支援することです。

自身の博士論文の作成では、アイデア生成から印刷までの全プロセスを自分のシステムで執筆しました。作家、ライター、研究者などからシステムを利用したいという申し出が多数あり、大学発のベンチャービジネスを模索した経緯があります。

【主要文献】

[1] 柴田 博仁, 堀 浩一: デザインプロセスとしての文章作成を支援する枠組み, 情報処理学会論文誌, Vol.44, No.3, pp.1000-1012, (2003).
[2] Shibata, H. and Hori, K.: Cognitive support for the organization of writing. New Generation Computing, Vol.26, No.2, pp.97-124, (2008).

 


アイデア生成支援 [2000~2001年]

日常生活で入手した情報を自分が現在抱える問題に結び付けて考えさせることにより、偶発的にアイデアを得ることを支援する環境を提案しました [1], [2]。

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具体的には、IdeaManagerというツールで現在抱える問題とアイデアを管理し、日常的に利用する情報管理ツールiBoxへの情報の登録をトリガーとしてIdeaManagerに格納された関連する問題とアイデアを検索して提示しました。
これにより、たまたま入手した情報を自分が現在かかえる問題やアイデアに結び付けて考えることを促しました。

【主要文献】

[1] H. Shibatta and K. Hori: A sysmtem to support long-term creative thinking in daily life and its evaluation, in Proceedings of Creativity and Cognition 4, Loughborough, UK, Oct. 13-16, (2002).
[2] H. Shibata and K. Hori: An information management system with facility to support long-term creative thinking, New Generation Computing, Vol.21, No.1, pp.23-36, (2003).


個人シソーラスの自動構築と個人化検索 [2004年~2005年]

個人が収集した情報群を解析して、関連語のリストからなる個人シソーラスを自動構築することを試みました [1]。個人が収集した情報群は決して量が多くないので、限られた情報群を有効利用するため、言語情報以外の文書の階層管理の仕方、文書が作成された日時の情報を利用してシソーラスを構築しました。

さらには、こうして構築した個人シソーラスをもとに、Webでの検索結果を個人化するツールを作成しました。具体的にはGoogleで「落合」で検索した際、岡山県出身の人には岡山県落合町の情報を上位にランキングさせ、土中日ドラゴンズのファンには「落合博満」の情報を上位にランキングさせる検索エンジンを作成しました。Googleのラッパとして実現し、検索結果を個人シソーラスを用いてランキングを再計算させることで、この機能を実現しました。

【主要文献】

[1] 柴田 博仁, 大村 賢悟, 吉岡 健: 異なる種類の文脈を統合することによる個人シソーラスの構築, 言語処理学会年次大会, (2005).

 


電子ペーパーデバイスの評価 [2014年~2018年]

A4サイズの電子ペーパーデバイスを日常的業務の中で利用し、問題点の洗い出しを行いました。そして、それをもとに電子ペーパーデバイスの新たな使い方を提案しました [1]。

A4サイズの紙、タブレット、電子ペーパーデバイスを用いて、さまざまな行為での人の振る舞いを観察しました [2]。結果として、電子ペーパーデバイスに対しては、片手で持ったり、机の上をスライドさせたり、比較的乱雑な扱いをすることが多いことがわかりました。このことから、電子ペーパーデバイスに対する振る舞いは電子機器というよりは、むしろアナログの紙に近い扱い方がされることがわかりました。

【主要文献】

[1] Shibata, H., Fukase, Y., Hashimoto, K., Kinoshita, Y., Kobayashi, H., Nebashi, S., Omodani, M., and Takahashi, T.: A proposal of future electronic paper in the office: Electronic paper as a special-purpose device cooperating with other devices. ITE Transactions on Media Technology and Applications, Vol.4, No.4, pp.308-315, (2016).
[2] Shibata, H. and Omodani, M.: Evaluating digital slate devices from users' behavior: Electronic paper devices as stationery. Journal of the Imaging Society of Japan, Vol.58, No.4, pp.370-377 (2019).

 

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